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「呪術の基本は音でございます。
ですから、鏡を割るなどという単純な術は、呪文などなくても気合の一声だけで事足りるのです。

言葉というものは、意味を持つことで力を司った音でございます。
火を起こす程度のものは、言葉の力を借りた呪文を紡ぎ、発動させます。

文字、図形なども同様です。
術が難しくなるほど、陣と言葉の力をたくさん借りて完成させます。
ですから、陣が複雑になり、呪文も長くなるのです。

たいていの術はこうして発動させますが、禁術と呼ばれる域に入ると、それでも足りなくなるのです。
そこで、音律を利用します。
一言で言えば、唱えるものが言葉の羅列だけの呪文から、言葉と音を組み合わせた唄になります。

それを、我々は呪と呼んでおります。

禁術の最たるものは、死者の蘇生です。

無から有は生まれない。
これは、呪術を使う前に肝に命じておかねばならないことです。

呪術は通常、力を代価に成し得ています。
力を音や呪文に乗せて代価とするのです。

しかし、禁術は代価が大きすぎます。
贄という発想は、代価を補うためです。

姫は、六歳のときに死者の蘇生を成そうとなさいました。

姫の気高きお命を代価に、王と妃を初めとする失われた命を取り戻そうとなさいました。
しかし、そのときには既に姫のお力は弱まり、成し遂げることは叶いませんでした。

__ここにあった花は、姫のお力が具現化されたもの。

これはずっと音を放っていたでしょう。
音波のような、不思議な音を。

封印と申しましたが、
姫が封印されていたものは、王と妃たちを殺した魔でございます。

これが発していた音は、封印のための音。
姫のお力すべてを注いで、魔を封じていらっしゃったのです。

これが壊れたということは、封印が解かれたことを意味します。

姫のお力は姫のところに戻り、
魔が__目覚めます!!」