舞踏会が終わりに近づくと、今年の舞姫が公表された。
名は、坂井 杏。
齢 十九、泉の愛弟子だ。

泉というのは、彼女の言うところのおばあちゃま。
遥の祖母だ。

任命のときに与えられるのは、薔薇を主とした簪。
その周りに、天使の羽がふわふわと舞っているデザインだ。

彼女は、それを国王陛下から手渡される。
そして、裕王子がそれを結い上げられた琥珀色の髪に刺す。
わあっ、と一気に拍手が起こった。

彼女はくるりと彼らを振り返ると、ドレスの裾を持ち上げて礼をした。
滑らかな所作。

再び開かれた瞳から、杏のような淡紅色が零れ出た。