聞き返しても遥は答えず、話題を反らせた。
「杏は、呪術師って信じるか?」
……彼は、急に何を言い出すのだろう?
呪術とは、アミルダ国の文明だ。
悠国は科学文明だから、この国の人々は呪術を忌み嫌う。
しかし。
「信じるわ」
それは、彼女がアミルダの末裔だからではない。
呪術の、特に禁術の記憶が、かすかに杏の中にあるからだ。
__血溜りの中で、血に塗れて、死者の蘇生という禁術の呪を唱えたのは、杏だ。
遥は一瞬、瞑目した。
「さっき、翡苑に会っただろう?あいつ、呪術師なんだ」
「え?」
「この国はアミルダ国を全否定して呪術を嫌っているくせに、この国の王族は国民に内緒で呪術師を抱えてるんだ。
翡苑は、その一人」
杏は瞬くことしかできない。
呆然と、遥を見つめた。
「……どうして、遥がそんなことを知ってるの?」
遥は答えなかった。
答えずに、寂しいような哀しいような微笑を口元に浮かべる。
杏は、それ以上追及できなかった。
「杏が許すなら、この傷をあいつに治してもらえる。痛みが消えて、万全の体調で舞える。
どうする?」
遥は表情を消して杏を見上げた。
そして、何かを探るように、杏は彼を見つめる。
おそらく、それはとても楽だろう。
これから舞うのに支障をきたさないし、舞っているときに失敗する心配もなくなる。
杏は微笑んだ。
「いらないわ。
怪我は自然治癒力で治るもの。それに、那乃は私の怪我を知って、この展開を用意したと思うの。
怪我をしたのは私のミスよ。最後まで、ズルはしたくないの」
その真っ直ぐな答えに遥は一瞬目を瞠って、苦笑した。
「……うん。そうだな」
「杏は、呪術師って信じるか?」
……彼は、急に何を言い出すのだろう?
呪術とは、アミルダ国の文明だ。
悠国は科学文明だから、この国の人々は呪術を忌み嫌う。
しかし。
「信じるわ」
それは、彼女がアミルダの末裔だからではない。
呪術の、特に禁術の記憶が、かすかに杏の中にあるからだ。
__血溜りの中で、血に塗れて、死者の蘇生という禁術の呪を唱えたのは、杏だ。
遥は一瞬、瞑目した。
「さっき、翡苑に会っただろう?あいつ、呪術師なんだ」
「え?」
「この国はアミルダ国を全否定して呪術を嫌っているくせに、この国の王族は国民に内緒で呪術師を抱えてるんだ。
翡苑は、その一人」
杏は瞬くことしかできない。
呆然と、遥を見つめた。
「……どうして、遥がそんなことを知ってるの?」
遥は答えなかった。
答えずに、寂しいような哀しいような微笑を口元に浮かべる。
杏は、それ以上追及できなかった。
「杏が許すなら、この傷をあいつに治してもらえる。痛みが消えて、万全の体調で舞える。
どうする?」
遥は表情を消して杏を見上げた。
そして、何かを探るように、杏は彼を見つめる。
おそらく、それはとても楽だろう。
これから舞うのに支障をきたさないし、舞っているときに失敗する心配もなくなる。
杏は微笑んだ。
「いらないわ。
怪我は自然治癒力で治るもの。それに、那乃は私の怪我を知って、この展開を用意したと思うの。
怪我をしたのは私のミスよ。最後まで、ズルはしたくないの」
その真っ直ぐな答えに遥は一瞬目を瞠って、苦笑した。
「……うん。そうだな」

