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杏は長く溜息を吐く。
「ああ~、緊張したぁ」
舞踏会の目玉、花姫たちの舞を終え、大広間には食事が運び込まれた。
極度の緊張の中、舞い終えた花姫たちが一角のテーブルに集まり、食事を楽しみながら愚痴を零す。
あとは審査の結果待ちだ。
そう零しながらも、項垂れることも猫背になることも自分に許さない杏を見て、遥は笑顔を深くした。
「でも、さすがだったな、杏は」
あの身体の強張りではフォローが必要だろうと思っていたが、彼女は練習通りに踊った。
いくつか間違えたところはお互いにあるが、他の花姫たちと比べると些細なもので、うまく誤魔化したから客にはバレていないだろう。
この緊張感の中、あれだけ踊れれば充分だ。
杏は完璧な出来ではなかったことにわずかな不満と不安を抱いているようだが、遥は確信を持って言える。
彼より一足早い目標の成就を。
「あ、ねえ見て、遥。
那乃よ」
杏は各テーブルを挨拶に回る友を見つけて、遥に声を掛ける。
那乃は花姫に選ばれなかったので、今日は見ていなかった。
「ああ、ホントだ」
彼女を見つめていた杏は、那乃を見つけた遥が眉間に皺を寄せたことに気づかなかった。
那乃は貴族の娘だから、この舞踏会に花姫でなくても参加できる。
だが、おかしい。
藤色のワンショルダーのドレス。
その胸元には王家の紋章の一つ、薔薇が赤い糸で咲いていた。
そして、彼女の隣に居るのは__この国の現、王子。
「どういうこと?」
杏が思わず、といった調子で零したとき、那乃と視線が合った。
その瞬間、杏の背筋に怖気が奔る。
杏は長く溜息を吐く。
「ああ~、緊張したぁ」
舞踏会の目玉、花姫たちの舞を終え、大広間には食事が運び込まれた。
極度の緊張の中、舞い終えた花姫たちが一角のテーブルに集まり、食事を楽しみながら愚痴を零す。
あとは審査の結果待ちだ。
そう零しながらも、項垂れることも猫背になることも自分に許さない杏を見て、遥は笑顔を深くした。
「でも、さすがだったな、杏は」
あの身体の強張りではフォローが必要だろうと思っていたが、彼女は練習通りに踊った。
いくつか間違えたところはお互いにあるが、他の花姫たちと比べると些細なもので、うまく誤魔化したから客にはバレていないだろう。
この緊張感の中、あれだけ踊れれば充分だ。
杏は完璧な出来ではなかったことにわずかな不満と不安を抱いているようだが、遥は確信を持って言える。
彼より一足早い目標の成就を。
「あ、ねえ見て、遥。
那乃よ」
杏は各テーブルを挨拶に回る友を見つけて、遥に声を掛ける。
那乃は花姫に選ばれなかったので、今日は見ていなかった。
「ああ、ホントだ」
彼女を見つめていた杏は、那乃を見つけた遥が眉間に皺を寄せたことに気づかなかった。
那乃は貴族の娘だから、この舞踏会に花姫でなくても参加できる。
だが、おかしい。
藤色のワンショルダーのドレス。
その胸元には王家の紋章の一つ、薔薇が赤い糸で咲いていた。
そして、彼女の隣に居るのは__この国の現、王子。
「どういうこと?」
杏が思わず、といった調子で零したとき、那乃と視線が合った。
その瞬間、杏の背筋に怖気が奔る。

