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パリーン、と何かが割れた音がした。

その音を聞きつけ、いくつもの足音が音のした部屋に押し入っていく。

「何の音だ!」

「閣下、ご覧ください!
花が……」

臙脂色のローブを被った者が指差すところを見て、閣下と呼ばれた男は顔を歪めた。

そこに散らばるのは、真紅の欠片。
それはもともと、薔薇を形作っていた。

「__解けてしまった、か……」

「小さなひびが入ってから幾晩。
……おそらく、もう限界だったのでしょう」

臙脂色のローブの男が、その欠片を手に痛ましそうな表情を浮かべる。
その真紅は、以前見たときよりも若干濃くなっているような気がした。

「これが割れたら姫の御身が危ないと言っていたが、具体的にはどうなる?」

閣下の言葉に、ローブの男は立ち上がった。
片手には、花の欠片。

杏の痣と同じ色。