窓から入り込む涼しい風に、テーブル上の白いものがはためく。

遥はそれを目の端に捉えて、それを拾う。
そして、彼の表情は泣きそうに歪んだ。

<遥へ
昨日はごめんなさい。
夜中まで探してくれてありがとう。
また、話し合って仲直りしようね。
それまでにいろいろ纏めておきます。

今日は先に行きます。
ハルは疲れていたら、今日は休んだ方がいいよ。
どうせあまり眠れてないでしょう?
また唄を聞かせてね。

いってきます。                       :杏>

「__っ」

辛かったのは、断然杏の方だ。
謝るのは俺の方で、休むべきなのは杏の方だ。

それなのに、どうしてこんな文が書けるんだ……。

__彼女は泣いていた。
昨夜彼が迎えに行く前に、目が腫れるまで、独りで泣いていた。

その上、夜中じゅう眠らずにずっと泣いていたのだ。

休むべきは、杏の方だ。

ガタリ、椅子が音を立てる。
遥は椅子の影にしゃがみ込んで__泣いていた。

あのとき、どうして俺は怒鳴ったんだ。
どうして自分の嫉妬を優先させたんだっ。

どうして杏の辛さを分かろうとしなかったんだ!

どうして、あのとき追いかけなかったんだっ!!

どうして、どうして、と後悔ばかりが浮かんでくる。

これよりももっと、きっと杏は辛かった……。