閉じられた地下室で、額に脂汗をかきながら打開策を考える。

これから光属性のものを呼び出そうとしても、もう力も時間も足りない。
第一、呼び出した対価として何を求められるか分かったものじゃない。
おまじないを唱えてリルフィに助けを求めようとしても、ティアの首にアレキサンドライトのペンダントはない。

予想もしていなかった。
それが何よりの敗因だった。
しかし、ここにアンジェがいないこと、それが不幸でもあり幸いでもある。

ティアの口元に微笑が刻まれた。
それを見て、トゥインも口角を上げる。
一度ゆっくりと瞬きをして開けると、もう心は決まっていた。

そう、誓ったのだ。
どんなものからもあの子を守る、と。

『全員、下がりなさい。私とティアで相手をする。お前たちは__』

そう、指示を出そうとしたときだった。
キラリ、と闇の目が金色に光った。

その不穏な輝きに呪術師たちは警戒を強める。
そのとき__。

闇を閉じ込めていた部屋の扉が吹き飛んだ。
その先に姿を現した少女を、咎めるように叫ぶ。

『__アンジェっ!!』

そして、その胸元にアレキサンドライトの輝きがないと知ったとき、彼らは絶望した。

早くここから逃げなさいと泣きたい気持ちで叫ぶ前に、闇が標的を定めて__笑う。

お前か__!

奴が何故攻撃をしてこなかったのか、彼らはやっと悟った。

待っていたのだ。
アンジェを喰らうのを。

少女の悲痛な悲鳴が耳を劈く。

『アンジェっ!』

我を失った我が子に駆け寄る彼らの声も悲鳴だった。
ペンダントをどこに落としてきたの、なんて今更言ってもどうしようもない。
いくら《取り込む》体質が強くても、まだ少女の子に耐えられるはずがない。

『アンジェ、受け入れたらダメだ!』

『拒みなさい、全力で。あなた一人が背負ってはダメよ!』

呼吸もままならず苦しむ彼女に、彼らは必死に声をかける。
それしかできないことが酷くやるせなかった。

『アンジェっ!』

歪んでいた顔が一瞬緩む。
酸素を取り込もうと大きく開いている口。
それが大きく息を吸い込んだ。

『っ!全員、結界を張りなさいっ』

その、喉が、震えた。


危機を察して指示を投げたものの、ティアとトゥインは距離を取ることもできず、肉と骨を切り裂く風に呑まれた……。