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「おーい、杏っ!起きねぇと遅刻すんぞ?」

朝日が差し込むベッドの上で、まだ夢の中を漂う少女を、同じ年頃の少年が揺さぶる。

「んん~、はるのばかぁ。もうちょっとだけ……」

このまま眠り込んでしまいそうな少女に、少年は起こすのを諦める。
少女を起こすには、時間が足らない。

「寝ててもいいけど、俺先に行くからな」

「え~、いじわる~」

「俺、日直なんだよ」

恨みったらしい声音に少年が溜息を吐くと、少女はむくりと起き上がる。
彼女は寝ぼけ眼のままふわりと微笑んだ。

「いってらっしゃい」

少年はその様子に破顔し、少女の頭を一度撫でた。

「二度寝するなよ。
いってきます」

ひらりと手を振って部屋から出て行った少年を見送り、少女は伸びをした。
カーテンを開けると、朝の日差しと蒼い透き通った空が目に入る。

__今日も一日、良い日になりそうだ。