『……つみ……』
呆然と、私は呟く。
それが何であるのか、私は知らなかった。
使われないことを切に願う。
ならば、何故発明などしたのだろう。
以前も、誰かがそれを望んだからではないの?
誰かが、大切な人を蘇らせたいと。
だったら、私が願うことも許されなければならないはずよ。
罪は私が負うわ。
それでナノが生き返ってくれるなら、どんな罪でも構わない。
赦されない罪でも構わない。
私は決して希望を失わなかった。
口伝されるということは、一度は完成した呪術のはずだ。
誰かにできて、私にできないだなんて、思わない。
ナノを蘇らせるの。
あの笑顔を取り戻すの。
忘れさせない。
約束を、破ることは許さない。
死なないで。
離れていかないで。
私の傍に居て。
あの笑顔を、もう一度私に向けて。
原理は古い本に記されていた。
流れが分かれば、もうあやふやであろう口伝されたものを聞くよりずっと確実だ。
使う術式展開はほとんどが応用だ。
計算しようにも、禁術を組み立てる計算など、わずか六歳の子供にはできない。
鬼気迫る様子で術式を再構築し始めてから三日。
寝る間も惜しんで、勘と応用で組み立てた。
書庫に顔を出した呪術師が気を遣ってくれて水だけは摂取していた。
身体はふらふらだけれど、気分は良い。
だって、完成したもの。
完成の証明は、陣から感じる力の流れ。
その向こうに、懐かしい気配を感じる。
確かなものなんて何一つなくても、血が教えてくれる。
呪術の天才、始祖リルフィの血が。
疲れきった身体で、私はふと空を仰いだ。
最期の空だ。
血がやけに騒ぐと思ったら、天頂の月は赤黒かった。
大きな月の、月蝕。
ざわりと、アレキサンドライトのペンダントがさざめいたような気がした。

