闇夜に笑まひの風花を

けれど、芽依の養い親の下級貴族は、彼女の受け入れを拒んだ。

もともと「王のご所望」として城に入れた娘だった。
両親は当然のごとく、王の寵姫になっているかと思っていたが(悠国は一夫一婦制だが、身分の高い者は戯れで妾を持つことも少なくなかった)、実際は呪術師と聞いて、彼らは怒った。

芽依には兄が二人居たと言う。
彼らは、両親の本当の息子たちだった。
それならば何故芽依を引き取ったのかと言うと、それはひどく簡単だ。
身分あるところの嫁に出して、自らの地位を確定するためだ。

そのための準備を整えていたところで、芽依は呪術師として家を出たが、王の寵姫になるならと喜んで渡した娘だった。
それなのに……、と彼らの嘆きぶりは想像に難しくない。

しかし、この両親は彼女を引き抜いた呪術師の話を聞いていなかっただけだった。
書類にもきちんと呪術師の文字は記載されていたと言う。
「王がご所望」と言う言葉に我を忘れて聞き逃した、両親のミスだった。

けれども、両親はそれを赦さない。
呪術師など、アミルダ国嫌いの悠国では、二度と良家には嫁がせれないからだ。
彼らは彼女を散々罵倒した末、王の寵姫がダメなら城の女官にでもなれ、と芽依との縁を切り捨てたと言う。

彼女は心をボロボロにして帰ってきた。
その頃には、もうほとんど彼女の目は見えなくなっていたと言う。
暗闇が怖い芽依には、それは地獄だった。
彼女の心も身体も休まることはできるはずもなく、晃良や仲間の言葉には耳も貸さず、術を使うことを禁止されても無視して……ただひたすらに、妹を探し求めたと言う。

晃良は爆発の原因を突き止めようと、何度も術式展開の確認と立会いを頼み込んだが、一切受け付けられなかったらしい。
そして、手掛かりの一切なかった彼女は、自らの身体を傷つけて血を流し、それを媒体に探し続けた。

そして、四年前。
彼女は大きな爆発を起こして、場内の医療団に入院した。

芽依の妹は、やはり見つかることはなかった。