「昨日、この絵を見せてもらった時にさ。正直よく分かんないけど、泣きそうになってきて。なんか、すっげぇ俺の事を分かってもらえてる気がしたんだ」



先輩の座った席の机には、さっき部長に見せたデッサンがそのまま置いてあって。


先輩は、それを手に取って笑顔を見せてくれた。



「初めて会った時、俺が好きなモノ3つ言ったの覚えてる?」



「野球と、夏の空と…チーズバーガー」



「当たり。でもさ、芹奈はまだ夏空しか教えてくれてないよね?」



そう言われて、私は少し躊躇った。


今なら、ちゃんと答えられる。



だけど…すごく恥ずかしくて。



「ちなみに、俺も…1つ変わったから」



「え?」



「チーズバーガーより、俺は芹奈のが好き。野球と、夏空と、芹奈が好き」



そう言って、先輩は優しく私を抱きしめてくれた。



「やっぱ、1番じゃないとダメ?」



先輩のその声が、どこか不安そうに聞こえて。


私は、慌てて先輩の背中をぎゅっと抱きしめた。



「1番じゃなくても…いいです。私も、夏空と、水彩画と…先輩が好きです」



1番じゃなくたっていい。


野球と夏空と、同じだって構わない。




私も…先輩が好きだから。