空と、絵の具と、白球と。

「でも……」



部長は、春也先輩の事こんなに好きなのに。


野球や夏にまで嫉妬しちゃうぐらい、大好きなのに。



「私もね、いいかげん疲れちゃった。もっと、私を見てくれる人を探そうと思うの。だから、あなたが…春也と一緒に進んであげて」



「私じゃ無理ですっ。野球だって全然知らないですしっ」



「別に、野球に詳しくなくたっていいのよ。春也は、野球をやってる自分を受け止めて欲しいの。この絵を見て、すっごく嬉しかったって言ってたわ。自分を分かってもらえた、って」



春也先輩が喜んでくれてた。


それだけで、私は嬉しいのに。



「春也を好きでいてくれるなら、支えてあげて。私には無理だったけど、あなたならきっと大丈夫」



そう言って、部長はゆっくりと立ち上がった。



「私、あなたの絵って好きよ。『絵を描くのが大好き!』って気持ちが、すっごく伝わってくるから。この絵、頑張って描き上げてね」



軽く手を振ると、部長は美術室を後にした。


残された私は…とりあえず、溢れ出てくる涙を止めるのに必死で。



嬉しいんだけど、悲しくて。


春也先輩が私に好意を持ってくれているんだって分かったら、ほっとして。


でも、部長と春也先輩の事を考えると…どうしようもなく辛くて。



いろんな感情が入り混じって、私の涙へと変わって溢れていく。