「どう…して?」



そう尋ねる私の心中は、かなり穏やかではなくて。


≪昨日≫という言葉が胸に引っ掛かっていた。



もしかして、私のせい?


私が…先輩とキスしたから?



「あなたのせいじゃないから、安心して。……というか、あなたがいいきっかけをくれたの」



「え……?」



「私達、このところずっとうまくいってなかったの。春也はさ、あのとおり野球が大好きで、夏が大好きで。だけどね、私は…野球をやってる春也が嫌いだったの」



「どうして…ですか?」



野球をやってる春也先輩は、私にはとても魅力的に感じた。


みんなもそう思うから、あんなに応援してる人がたくさんいるんだろうし。



「すごく…遠く感じるの。野球をやってる時の春也は、きっと私の事なんて忘れてしまってる。夏はね、野球の大会も多いの。そうなったら、ますます春也はこっちを見てくれなくて。だから…私は野球が嫌い。夏も、嫌い」



そう言って、部長は笑った。


とっても悲しそうに笑った。



「ガラスが割れた日、夕方に春也と会ったの。そしたら、嬉しそうにあなたの事話してて。『美術部の川澄さん、夏空が好きだって言ってくれてさ。なんか、気が合うかも』って、嬉しそうにそう言ってたわ」



「部長は、春也先輩の事が好きなんですよね?だから、野球も夏も嫌いになって……」



「春也はね、自分と一緒に進んでくれる人がいいの。自分と同じモノをちゃんと好きだって言ってくれる人がいいのよ」