「川澄さん……?」



ふいに名前を呼ばれて、私は慌てて振り返り。


そこにいた人を見て…胸が詰まりそうになった。



「部長……。どうして……?」



入口に立っていたのは、石川部長だった。


制服を着て、鞄を持っている。



「3年は、自由参加の夏期講習があるの。部活が無い日は来てるんだけど…川澄さんは?」



「私は、その……」



まさか、春也先輩に部長との仲を確認しに来たとも言えず。


返答に困ってしまった。



「もしかして、こっそり課題やりに来た?」



私の疚しい心の内を知らない部長は、笑いながら中に入って来た。


うまい言い訳が見つからなくて、とりあえず頷いておいた。



「何にするかは、決まった?」



そう言って、私が鞄を置いた席の隣に腰を下ろし。


私も、慌てて席に着く。



この絵を見せたら…部長はどう思うんだろうか?



心臓をかなりドキドキさせながら、私はトートバッグからスケッチブックをゆっくりと取り出した。