美術室に行くと、いつも通り私が一番乗りで。


誰の姿も見られない。



毎度の事ながら締め切った窓のせいで、部屋の中に熱気がこもっている。


鞄を近くの机の上に置き、私は窓を開けに急いだ。



「あ、野球部……」



グランドに面しているこの部屋の窓からは、ちょうど野球部の練習風景が見えた。


たくさんの部員達が、キャッチボールをしている。



「これだけ人がいたら、どれが神崎先輩か分かんないよぉ」



野球部員は、ざっと5~60人はいそうで。


おまけに、みんな同じ服を着てるからちっとも見分けがつかない。


とりあえず、私は野球部に目を向けながら窓を1つずつ開けていった。



蒸し暑いながらも、締め切っていたこの空間に風が通り始める。


セミの声も一緒に……。