「ねぇ、芹奈。相手は誰なの?」



もう一度、尋ねられた。



尋ねた実咲ちゃんも、その隣の祐梨ちゃんも。


すごくすごく真剣な顔をしていて。



変な緊張感が、私達の間に走っていた。



「春也…先輩。3年の、水木春也先輩」



その雰囲気に押されて、私はとうとう打ち明けてしまった。



恥ずかしさから、また顔が赤くなるのが自分でもよく分かって。


言い終わると、自然と自分の両頬を押さえていた。



だけど、その場の空気はちっとも変わらなかったんだ。


実咲ちゃんと祐梨ちゃんは、顔を見合わせて何だか厳しい顔をしている。



なん…で?



こんな雰囲気になるなんて、思いもしなかった。


もっとこう、冷やかされたり、一緒に喜んでくれたり。



そんな風になるんだと思ってたんだ。


実咲ちゃんの、あの言葉を聞くまでは。




「芹奈、落ち着いて聞いてね。その人ね…彼女いるよ?」