「とりあえず、上がって」



あれから30分後。



着替えを済ませた私は、傘を差して歩いて祐梨ちゃん家に来て。


玄関のチャイムを鳴らすと、すぐに祐梨ちゃんがドアを開けてくれた。



「お邪魔します」



祐梨ちゃんのトコは共働きで、昼間はいつも誰もいなくて。


もちろん、他に「いらっしゃい」って言ってくれる人はいない。



祐梨ちゃんの後に続き、私は2階の彼女の部屋へと向かった。



「急にごめんね」



部屋に入ると、ベッドに腰かけていた実咲ちゃんがすぐにそう言ってきた。



「いいよ、別に暇だったから」



そう答えながら、ちらっと彼女の様子を窺う。



元気の塊の祐梨ちゃんも、今日は何だか暗く思えて。


実咲ちゃんは決してはしゃぐ方じゃないけれど、それにしてもやっぱり元気が無い気がする。



「私ね……」



隣に私が腰を下ろしたのを確認すると、言いにくそうに実咲ちゃんは口を開いた。