「まぁでも、私は野球部が見れるからいいけどっ」



そう言った彼女の顔は、恋する女の子って感じで可愛かった。



「野球部の先輩だっけ?祐梨ちゃんの好きな人って」



確か、前にそう教えてもらった気がする。



「そうなのっ、3年の神崎先輩。大人っぽくて、めちゃめちゃカッコイイんだからっ。そうだ、芹奈も美術室から覗いてみなよ。ファースト守ってる人だからさ」



「ファースト……?」



そう言われても、私にはよく分からなくて。


野球はあんまり詳しくない。



「じゃあ、ちょっと先行くね。うちの先輩、1年が遅いとマジ怖いからさぁ」



軽く手を合わせると、祐梨ちゃんはスポーツバッグを肩に掛けたまま軽やかに走って行った。



さすが、短距離ランナー。


その走る姿がとても綺麗で、モデルにして絵を描いてみたいなって思ってしまう。