「絵が描けたら、一番に見せるね」



「分かった。先輩への愛がどんなものか、楽しみにしてるから」



そう言って私の背中をポンッと叩くと、実咲ちゃんは隣の席に腰を下ろした。


そのまま大きなトートバッグから画板を取り出し、机の上に置く。



その画板に挟んであった画用紙をちらっと見ると、既に色塗りが少しされていた。



「やっぱり早いね、実咲ちゃんは」



「写真撮っておいたから、それ見て描いたし。早いに決まってるよ」



そこに描かれていたのは、ひまわり畑の中の楽しそうな笑顔のカップル。


その女の子は、どことなく実咲ちゃん本人に似ている気がして。



「あ、これ?私と彼氏だよ。この間、デートした時に撮ったんだ」



私の視線に気付いたのか、実咲ちゃんは照れる事なくそう教えてくれた。



デートか……。


もちろん、男子とつき合ったりした事なんて無いから、デートなんてした事ない。


今までは別に何も思わなかったけど、今の私はその言葉に敏感に反応していた。



「デートって、緊張…しない?」



「そりゃ、初めての時は緊張したよ。でも、そのうち楽しくなってきて、そんなことすっかり忘れちゃってたかな」



ふと、先輩とデートをする自分を思い浮かべたけど、やっぱりダメだった。


緊張しちゃって、きっと楽しめない気がする。