「こっそり、離れた所で描くよ」



それが、今の私にできる精一杯。



でも……。



遠くから先輩の姿を見て、その姿を描きとめる。


それだけで、十分幸せな事に思えるんだ。



「せっかくのチャンスなのに?」



「だって、もし断られたら?そしたら、先輩の絵を描く事もできなくなっちゃうよ」



それだけは、絶対に困る。


コンクールに出すからとかじゃなくて。


この描きたい欲望を止められたくないから。



「……分かった。芹奈のいいようにやりな。でも、何かあったら私に相談するんだよ?」



「うん、ありがと」



その言葉に込められた優しさは、ちゃんと私に伝わってきた。


世間知らずで男子が苦手な私を、小学校の時からずっと助けてきてくれた実咲ちゃん。



いつも、私の事を心配してくれて。


どれだけ…私は救われたか分からない。