「この気持ちが『好き』なのかはよく分からないけど、描きたく…なったの」



気持ちを察して欲しくて、私は実咲ちゃんを見上げた。


彼女なら私のこの想いが何なのか、分かってくれると思ったから。



「私は、好きなものしか描きたくないな」



そう言って、笑顔で見下ろしてくれる。



そうだね。


私も、小さい頃から自分の好きなモノばかり、描いてきたんだった。


こんなに描きたいって思うなら、私はやっぱり春也先輩の事が好きなんだ。



「先輩にさ、頼んでみたら?絵のモデルになって下さいって」



そう言うと実咲ちゃんは急にしゃがみ込んで、何かニヤニヤしながら私を見ている。



「そんなの、無理に決まってるよ。っていうか、頼めないし」



とてもじゃないけど、先輩にそんな事頼めない。



だって、先輩に迷惑が掛かるかもしれないし。


それに、先輩は、人気があるから。


図々しくも、抜け駆けする様な事できないよ。



それに…出来上がった絵を見て、先輩ががっかりした顔を見せたら?


私…立ち直れないかもしれない。