「あれっ、芹奈?」



聞き覚えのある声がして右に目を向ければ、今日二度目の祐梨ちゃんだった。


白いTシャツに陸上部独自のジャージを履いた格好で、手を振りながらこっちに歩いて来る。



「ここで何してるの?」



不思議そうな顔で、そう尋ねてくる。



そりゃ、そうだよね。


だって、今朝まで全然野球に興味の無かった私が、こんな所で見学してるんだから。



「ちょっと…見学?」



春也先輩の話をしたら長くなりそうで、とりあえずそんな感じで誤魔化した。


すると、祐梨ちゃんはじっと私の手元を見ながら何やら頷いてて。



「野球部の絵、描きに来たんだね」



「えっ?あ、うん……」



あながち間違ってるわけじゃないんで、私は曖昧に返事をした。


野球部の絵といえば、そうなるのかも。


だって、春也先輩は野球部なわけだし……。