先輩が球を打ってしまう前に、少しでもこの姿を描き留めておきたかった。



スケッチブックの空きページを探すのが、どうにももどかしくて。


バサバサッと激しい音を立てて、紙を捲っていく。


それと同時に、先輩のこの姿を焼き付けようと必死にグランドに目をやった。



そして次の瞬間、スカイブルーの空に白球のアーチが大きく描かれ。


打球の行方を確認しながら、低い姿勢で走って行く春也先輩。


チームメイト達の盛り上がる低い声と共に。


すぐそばから聞こえてくる、女子の黄色い歓声の渦。



気が付けは…春也先輩はべースを一周し終わっていた。



「ランニングホームランとかって、マジやばくない?」



見学の中から聞こえてくる、ギャルっぽい子の嬉しそうな声。



ランニングホームランって言うんだ……。



野球に全然詳しくない私。



もっと、知りたいと思った。


野球のルールや面白さをもっと知って、春也先輩が好きだと言うモノを私も好きになりたい。



そうすれば…もっと先輩に近付ける気がするんだ。