私が箒とちりとりでガラスの破片を始末する間、春也先輩は本当にここにいてくれて。



その間、先輩はいろいろな話を私に聞かせてくれた。


美術の大林先生(うちの顧問)の失敗談や、野球部の先輩達の話。



そして…先輩の好きなモノの話。



「川澄さんはさ、好きなモノ3つ挙げてって言われたら何を挙げる?」



さっきまでの緊張が嘘みたいに、私は先輩と一緒にいる事を楽しく感じていた。


先輩の優しさや明るさが、私の作った強靭な壁をだんだんと溶かしていってくれたから。



「3つですか……」



3つって言われると、困ってしまう。


夏の空とお父さんにもらった絵の具は決まってるけど、あと1つは何だろう?



「俺はね、野球とチーズバーガーと…夏の空かな」


そう言って先輩は、窓の外の景色を眺めながら嬉しそうに微笑んだ。



「あっ、私もっ。私も、夏の空好き…です」



同じ事を思ってたって分かったら、言わずにはいられなかった。


嫌な顔されるかな?って思ったけど、先輩はその笑顔を私にも向けてくれたんだ。



「マジ?いいよなぁ、夏の空ってさ。色が綺麗だし、甲子園って感じがしてさ。気が合うかもな?俺ら」



そう言ってくれた先輩の言葉に、胸がキュンと締め付けられるのを感じた。