「あっ、足……」



スパイクを外で脱ぎ捨てた春也先輩は、野球のソックスで歩いてる。


あれでガラスの破片でも踏んだら、それこそ先輩が大ケガしかねない。



「あのっ、私やりますからっ」



掃除道具入れの中を探っている先輩の所に、私は慌てて駆け寄った。



「えっ?いいよ、割ったの俺だし」



「でも、先輩シューズ履いてないし……」



そう言って、先輩の足元を指差して示した。


先輩も、つられて自分の足元を見ている。



「そっか……。ちょっと待ってて、シューズ履いてくるからっ」



「い、いいですよっ。ホント、私やりますからっ」



美術室を出て行こうとした春也先輩の左手首を…咄嗟に掴んでしまっていた。


先輩も、驚いて私をじっと見ている。



しまった。

どうしよう?この手とこの空気……。



急に恥ずかしくなり、私は顔を俯かせたまま上げられなくなってしまい。


手も離すに離せなくて。



先輩、変な子だって思ってるよね…きっと。



「……分かった。じゃあ、川澄さんに任せるよ。その代わり、終わるまでここにいてもいい?」



そう言ってくれた先輩に、私はただ何度も頷き返すことしか出来なかった。