恐る恐る振り返ると。


さっきまで離れた所にいたのに、もう窓の向こうに野球部の人が辿り着いていて。



心配そうに…私を見ていた。



「だっ、大丈夫ですっっ」



恥ずかしくて目が合わせられず、少し逸らしたままそう答える。



「なら、良かった。ごめんな、俺が打ったボールがここまで飛んだみたいで」



さっき声を掛けてきた背の高い方の人が、そう言って頭を下げてきた。



「ぜ、全然大丈夫ですからっっ」



「ケガしてなくて良かったな、春也。ところで、ボールってそこにある?」



もう1人の声の大きい小柄な人が、部屋の中に目を向けながらそう尋ねてきた。



「あっ、ありますっ」



慌てて、私は床に転がっていたボールに手を伸ばした。


やっぱり、野球のボールだったんだ……。



「あ、どうぞ……」



そのボールを、開いた窓越しに小柄な方の人に手渡す。



「あ、サンキュ」



「雅志、先に戻ってて」



背の高い方の人は、何故だかその場でスパイクを脱ぎ始めた。



「いいけど、春也は?」



「俺はガラス片してから行くから」



そう言ったかと思うと、春也と呼ばれた人はいきなり窓枠に手を置き。


ひょいっと体を持ち上げた。