レモンムスク



「眼鏡、返してください!」

私は、少しイライラして、若干大きめの声を出し、
ブラブラと差し出された眼鏡をつかもうとした。


「だめだ」


彼は、わたしが伸ばした手を、ひょい、と軽くよけて
低く小さくつぶやいた。

?
拒否する意味が分からない。


「ちょ…っと、…っ!!返してくださいてば!!」


「だからだめだ。」


膝をついて、少し身を乗り出して手を伸ばした
私の腕を片手で掴んできた。







次に発した彼の言葉に、
わたしはとてもショックを受ける。


どんな嫌味を言われることにも慣れていたはずなのに。


どんな言葉よりもショックを受けた。