子供のように泣きじゃくる、宏介のかたに手を添えるのは、何度かあったことのある、宏介のお母さんだ。

「優衣ちゃん。」

そう呟くと、また涙を流した。
自分で言うのも、なんだけど私のかおは、傷ひとつないきれいな顔をしていた。

グロいことになってたらどうしようかとも思ったけど、案外普通で安心した。

「起きろよォ優衣。」

宏介の声が、室内にこだました。

「宏介、優衣ちゃんはもう、目をさまさないの。」

「嘘だぁ。嫌だよ!!起きてよ優衣!」

普段私の前で見せる、宏介は、大人で少しやんちゃな男。

でも母親の前では時おり、子供のようになる。

マザコンなの?って聞いたこともあったっけ?

しばらく悩んだあと、気まずそうに、恥ずかしそうに、
『若干?』ってあなたは答えたね。

今はただ、玩具を買ってもらえず、ただをこねる子供のように、嫌だと繰り返していた。