愛のかけら


「ねえ、気持ちいいから来なよ、


玲音(れおん)も」


今のカレは、玲音――藤沢玲音。

「そう?笑

裸足でだいじょうぶかな?笑」


やさしい顔のカレが、

わたしの視界の向こうで靴を脱ぐ。


「おおーっ(笑)

裸足気持ちいい!」


そしてわたしに走ってくる。

「わあーーっ(笑)」

歓声をあげて子どもかよ(笑)

「わあー」


玲音はそのままわたしを抱きしめる。

勢いで思わず崩れそうになるわたし。

「もう。

服が砂だらけになったらどうすんの(笑)」


軽くたしなめるわたしに、

玲音は笑う。


「いや、ごめん(笑)

裸足があんまり気持ちいくて」

抱き合ったまま、

わたしたちは波の音を聞く。


「ふー(笑)」

「なに(笑)」

「キスすると思った?」

「え、」


玲音はいきなり、

わたしをお姫さま抱っこした。


「重ーーっ!!(笑)」

「ばかっ」


そのまま波打ち際に歩いていく彼。

「ちょ、ちょっと!」


「腕疲れたから放そうかなぁ(笑)」


玲音は脛まで海に入ってそんなことを言う。

マジやめてよね

「ばか、

放したらマジで怒るよ」

わたしは玲音をにらむ。

「ふふっ、

マジなわけないし(笑)

ビビった?(笑)」


玲音がドヤ顔してる。

「もう!」

わたしは手を上げそうになったが、

玲音はやさしく言う。

「聞こえるね(笑)


波の音が。


ずーっと側に」


玲音は、春の日差しにまぶしく見えた。

「うん、いいね」


愛のかけらだ。