……
「どうしてだ?」
「……」
「どうしてお前は、暴走族が嫌いなんだ?」
「どうしてってそりゃあ、あたしの妹が暴走族のせいで『死んだ』から」
「……」
その場にいる全員の動きが止まった。
千里は目を少し見開いた。
「まあ、嫌いと言っても、レディースは嫌いじゃないけどね…」
「どうして、…死んだんだ……?」
「あたしと、由梨亜は元々レディースに入ってたの。中学の途中まで」
「……」
千里たちは声を発しない。
「あたしが入ってた理由は、お兄ちゃんがここら辺で有名な不良で、妹のあたしは狙われるから。お兄ちゃんはあたしより小さい妹の朱莉を守った」
朱莉は守られていた。
でも
「朱莉の学校帰りをいつも迎えにお兄ちゃんは行ってたけど、1回だけ行けない日があった。その日に、お兄ちゃんを恨んでた『鬼神』ってチームが朱莉を襲ったの」
「えっ」
そこで初めて、ナルが声を発した。
「バイクで朱莉の周りを囲んで、朱莉を逃げれなくして、あとから来た車に入れられて、溜まり場に連れてかれてレープされたの。あたしとお兄ちゃんとあたしのチームが行ったときには、全ての行為が終わったあとだった。小学校5年生で、そんな事されて、朱莉が普通でいられるわけなくって、精神病院に入院したの。だけど、朱莉は手紙を置いて病院を抜け出して、街に行って、車の行き交う道路に飛び出した。朱莉は即死だったの。守ってあげられなかったあたしたちも悪い。けど、そんな事小学校5年生の女の子に、まだ11歳の女の子にそんな事した奴らが許せなかった。だからあたしは暴走族がヤンキーが嫌いなの!」
あたしはその事を話してる間泣かなかった。泣きたかったけど、ここで泣いたら負けのような気がしたから。
