Princess of Magic

 そんな事が出来るんだ…名前ひとつで・・・・

 〈そんな事なんかじゃないわ。たとえば結婚。今は簡単に離婚なんてするけれど、昔は結婚はお互いの真名を知り合って、魂自体がつながれたも同然だったのよ。だから離婚なんてありえない。〉

 『へ~。で、あなたのお名前は?』

 〈だから!真名か名かどっち?〉
 『真名は人に知られてはならない名前で名は普通にみんなが呼びあう名前…ですよね?』

 〈えぇ。その通りよ。〉
 『なら、別に真名でいいんじゃないですか?だって、私たちは同じなんですから。』


 〈同じだからと言って、名前まで同じとは限らないのよ?〉
 『でも、あなたの名は姫(いん)であり姫(ひめ)でしょ?』
 〈あら!正解!どうして分かったの?〉
 『直感ですね。あの時、私の口を動かしたのもあなた?』
 


姫が言っているのは庇がMagic Countryのことを話した時に姫と祇の名が勝手に口から出てきた時だった。



 〈あれは、知らない。私が目覚めたのはあの後だし。〉
 『え?ずっと起きてたわけじゃないんですか?』
 
 〈私は、そうね…11年位寝てたわね。〉
 『11ねん?!すごく長い間寝てたんだ…』


 〈えぇ。あなたのおかげでね。〉
 『私?でも、私あなたに今日初めて会いましたよ?』
 〈いいえ。まだ陽が生きていた時もこうやって夢の中で話していたわ。まぁ近いうちに思い出すわよ。・・・で、私の真名だっけ?〉


 
 あぁ!そうだ!真名をしりたかったんだ!

 『はい。あなたの名前を教えて下さい』
 〈私の真名は、姫嘉(ひめか)よ〉
 『姫嘉さん…』
 
 案外今時っぽい名前だなぁ…。

 〈当たり前でしょ。真名があるのは今はMagic Countryだけだもの。今の外界の生活や化学。Magic Countryが出来たころ、つまり私が王妃だったころと大して変わらないもの。〉

 え?姫嘉さんは何年前に亡くなったんだろ?

 〈そうね…1000年くらいかしら?〉
 『え?!そんな昔に今の科学が…』
 〈当たり前よ。科学だけでなく魔法まで出来ちゃうんだから!〉
 『そっか。って言うか、姫嘉さんって王妃らしくないですね』
 
 〈さんはいらないわ。姫嘉でいい。それに敬語はいらないわ。〉
 『極力努力する…』
 

 〈そうそう!それと、私が王妃らしくないのは自由だからよ。さ、朝よ。起きて。大変だろうけど頑張って。何か忘れていることで思い出さなきゃいけない時は、落ち着いて自分自身に問いかけて。じゃあ、さようなら。〉

 『え?ちょっと待って下さい!!姫嘉!!』

姫嘉はそれだけ言うと消えて行った。