庇におやすみと言い、部屋に戻ったものの、先ほどまで聞いていたことがまるで夢のようで、目が冴えてしまい、眠るに眠れず、窓辺から満月を見ていた。
お母さんがお姫様。しかも魔法の国の・・・
次は私がその国に…
しかも、咲ちゃんはもうとっくの昔に100歳を超えてる・・・
『頭がパンクしそう・・・』
姫の頭の中は文字がぐちゃぐちゃに混ざっていた。
〈・・・よ。〉
『え?!・・・って誰もいないよね…気のせいか』
〈あら、気のせいじゃないわ。〉
『!!何??!!どこから?!』
〈気付かないふりをしても無駄よ。もう分かっているんでしょう?〉
その声はまるで姫に語りかけているようだった。
姫は深呼吸をし、冷静さを取り戻してその声を良く聞いた。
『・・・・・私の中から聞こえる…』
〈えぇ。私はあなただから。あなたの中から、あなたに話しかけているのよ〉
『あなたは一体…』
〈口を動かすことないわ。心の中で思うだけで私に聞こえるから。どちらかと言うと。寝た方がいいかも〉
『どうし・・』
どうして?
〈だって私あなたに会ってみたいもの!〉
あぁ、あなたの要望ですか…
〈そうよ。悪いかしら?私の要望はあなたの要望でもあるのだから!〉
でも、もう少しだけ、この月を見ていたいんですけど…
〈いいからいいから。〉
良くありません!って。そっか、また来月見れるし、いっか!
〈そうそう。さぁ布団に入って話しましょう?〉
分かった。寝るからしばらく静かにしてくださいね。
〈は~い〉
姫はそのまま布団に入って目を閉じた。
いつもなら、しばらくは寝付けないのに、今日はすぐに寝付いた。
遥か下に落ちていくような感覚と共に...
