それでもおじさんは叶チャンを諭す様に、小さく笑いを浮かべた。



「好きだったから。母さんの事も、そいつの事も、同じくらい。二人に、幸せになってもらいたかった」






叶チャンの手の震えは、まだ治まらない。







あたしは、泣きそうだよ。





ねぇ、じゃあ叶チャンの幸せは……



叶チャンの幸せは、誰が願っていたの?




ねぇ……





「ちょっとした、すれ違いだったんだ、母さん達が別れたのは。本当は別れるべきじゃなかった。だけど父さんは、ずっと母さんを愛していたから……だから再婚する事になった」








「……勝手な事言うなよ」


叶チャンの手の震えは、どうやら声にまで伝染してしまったようで。


震えた声は弱々しくて。




でも、ポタリとテーブルを濡らした小さな雫は、あたしの涙。








痛い。


心が痛いよ。



涙はその痛みと比例して、とめどなく溢れ出す。






「分かってる。ろくでもない親だ、俺は。でも母さんも父さんも、叶一の事、大切だと思ってる」


おじさんの微笑みは、やっぱり叶チャンがいつも見せる微笑みと同じだった。