「結夢〜!お財布忘れたぁ!」


パンやら食券やらを買い求める生徒達でごった返している購買。

あたしはそこにたどり着いて、お財布を持って来ていない事に気付いた。


「あたしが立て替えといてあげるから。メロンパンでしょ?」


「ありがとう〜!」

結夢は自分の分の昼食と、あたしのメロンパンを確保すべく、一人で戦場へと乗り込んだ。


なんて勇敢なのかしら!

あなたッ、輝いているわ!


と、あたしは少し離れた所から、呑気にエールをおくった。








“先輩達、何ですか?”


“イイからついて来なよ”


昼休みの喧騒の中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。



その方向を見遣ると、声達は下駄箱を通り越し、裏庭に消えていった。


消えた声の主の後ろ姿が見えた。



やっぱり美姫だ。



2年の女子三人に囲まれながら歩く後ろ姿も、小さくなっていく。



裏庭は、滅多に人が来ない。

まさに呼び出しには打ってつけの場所。



美姫が2年の女子に目を付けられてる事は知ってる。


あたしは気になり、結夢の事も忘れてその後ろ姿を追う事にした。