久しぶりに、その声で名前を呼ばれた。


何でだろう。


何でこんなに安心してるんだ。



「のぞみ……?」



もう一度あたしの名前を呼ぶ声に、はッとした。



あたしは涙を思い切り拭い、叶チャンに笑顔を向けた後、急いで家の中に駆け込んだ。






分からない。


涙が溢れる。


心が満たされたような気がした。



「……何で」


こんな気持ち。




嫌だ。



考えない。



知らない。



知りたくない。











『恋』や『愛』や『情』なんて、今まで考えた事なんてなかったね。


ただ『好き』って気持ちしか知らなかった。




ううん、まだ、知らない。


あたしは、知れない。



あたしがそれを知る事になるのは、もっと先の事だから……。








次の日、叶チャンがあたしの教室に来ると、いきなり誠を殴った。

でも誠は殴り返したりはしなくて。



二人の喧嘩の原因なんて知らなかったけど、誠は、俺が悪いって言ってた。


二人がいつの間に話しなんてする仲になったのか疑問だったけど、誠ははぐらかした。