『今家に居るの?』

「うん、さっき帰って来たよ」

『おかえり』


誠の優しい声が耳に留まった。



――ヤバイ、泣きそうだ。


この家に帰って来て「おかえり」なんて言われた事、今まで無かった気がする。





「……た、ただいま……」



泣きそうな声を抑えて、この家で初めて、相手に向かって「ただいま」を言った。


『俺、すっげー寂しかったよ。一緒に帰れなかっただけなのに』


「……うん、ごめんね」


誠と帰らなかった事を、少し後悔した。

結夢との時間は楽しかったけど、何だか複雑な気分だな。



『謝んなって。こんな素直になってくれんだったら、たまには別で帰ってもイイかな〜なんて♪』


「ちょッ、何よそれぇ!」


さっきまでと打って変わった態度に、少しでも後悔した自分が馬鹿らしくなった。


『まぁ、一緒に帰れなかった分、会いに行けばイイし』

「何、どーゆう事?」


『外、出て来れる?』


「外って……」



――まさか



――まさか……





あたしは携帯を耳にあてたまま部屋を出て、ドタバタと階段を下り、玄関の扉を開けた。