希祈はボロボロでホコリまみれな本を抱えたまま、身体を起こした。

全身を床に打ち付けたのか、どこを動かしてもひどく痛みが走る。


「制服が~…」

希祈はパンパンと制服についたホコリをはたいた。


小さい頃から危険なことを軽々こなす希祈は、よく親を困らせた。

崖に登ったり、木に登ったり。
何度か木から転落して、そのたび親はヒヤヒヤさせられていた。
もっとも、本人は何が起こったのかまったく理解していないようで、いつもキョトンとしていたのだが。


今回も、落下慣れの身体が活かされたらしい。
まるで何事もなかったかのように深く息を吐いた。


…見つかってよかった。


ほっと安心して立ち上がろうとしたときだった。


「おまえ…大丈夫?」


ホコリまみれの本棚の影から声がした。