「……やっと見つけた~」
希祈はその本を指さして、嬉しさのあまりくるっと1回転した。
大きく背伸びをすると、固まっていた筋肉がほぐれるようだった。
安心して、満足気に思わず笑みをこぼす。
表紙が青くて、金色の文字!
間違いない!
棚の1番上にあったその本は、今にも破けてしまいそうなほどボロボロで、ホコリだらけだった。
とりあえず本を引き出そう。
そう思った希祈は、近くにあった椅子を引き寄せて、試しに乗ってみた。
しかし、女子高生の平均身長よりも小さい身体の希祈の手が、棚の1番上に簡単に届くはずもなく、あっさり断念。
机を引っ張り出して、机の上に椅子を乗せた。
少しゆらゆらしているが、希祈は、よしっ、とこぶしを握ると、その上に乗った。
元々陸上部だった希祈は、運動神経だけは誰にも負けない自信があった。
それもそのはず。
陸上部の大会が終わればバレー部に呼び出され、バスケ部に呼び出され、水泳部に呼び出され…
体力もあれば顔も広く、誰とでも仲良くなれる希祈は、人数合わせにはぴったりの存在なのだ。
ゆらゆらした椅子の上でバランスを取りながら、希祈はぎゅうぎゅうにつまった本と本の間から、無理やりそれを引っ張った。
…しかし、利用頻度が少ないこの図書室の、さらに奥の方にある棚の本だけあって、希祈が目一杯力を込めてもなかなか抜けない。
誰かを呼んでくるしかないかなぁ…
バランスを取りながらだと、どうも力が込められない。
ふとそう思い、力を抜きかけた瞬間だった。

