「…うー…悔しいー…」 悔しい。 蓮がこんなに優しいことが。 いつも余裕たっぷりで、冷静で、大人で… 無口でクールで、絶対に笑わない人だと思ってたのに… こんなに柔らかい笑顔で、すごくすごく優しくて… 身体は素直だ。 蓮の優しさにホッと安心したのか、涙がこぼれ落ちて止まらない。 希祈はしゃっくりをあげながら小さな小さな声で言った。 「……ありがとう…」 闇に呑まれそうだった私を、救い上げてくれたのは、今目の前にいる人。