大きい背中。
大きい手。
相変わらず、蓮の背中から心臓の音が規則正しく聞こえてくる。
無意識のうちに感じてしまっていた、蓮の匂い。
希祈はまるで魔法にでもかけられたかのように、蓮のことをずっと考えていた。
…きっと助けてもらったからだ。
本人はそう思っていた。
いや、思いたかった。
希祈は、自分の心境の変化に気づきたくなかった。
なんだか、自分が自分じゃなくなってしまうような気がして…。
それでも、溢れてくるような思いは止められない。
希祈の中で膨らみ始めた思いは、意識してなくてもだんだん大きくなっていっているのがわかった。

