「ほら。」 蓮はしゃがんで希祈の前に背中を向けた。 希祈がキョトンとしていると、蓮は当たり前のように"早く"と急かす。 目の前にある、希祈よりも断然大きくてたくましい背中。 そうすることが当たり前と言わんばかりの蓮に、希祈の鼓動は素直にはね上がった。 希祈は少しためらいながら、蓮の背中にそっと身を任せた。 図書室の本の匂いと、ゆっくりゆっくり流れる時間の中で、希祈は蓮によくわからない感情を抱いた。 誰もいない図書室に、2人。2人だけの、時間。 今私が感じているのは、川本の体温…。