恋イチゴ



なぜ希祈がここまで自己嫌悪に陥っているのかを、蓮は全てお見通しだった。

それはただ単に同じクラスだから、というわけではない。

誰にでも話しかける希祈は、もちろん蓮にも毎日挨拶をしていた。

クールで無口、いつも遠くから眺めているだけ、喋るなんてもっての他、という女子。
クールで無口、振り返らせて顔を覚えてもらいたい、目が合えばラッキー、と用もないのに名前を呼んで、振り返ればきゃあきゃあ騒ぐ女子。

蓮にとって女子は、大きく2つの種類に分けられるようなものだった。


しかし、希祈は違った。

誰にでも笑顔で平等に話しかけ、いるだけで場の雰囲気がパッと明るくなる。

それは八方美人なんかではなく、純粋に人を思う希祈だからできることだった。

本人はきっと無意識だ。
だからこそ、そのまっすぐで飾り気のない性格が、周りにいるみんなにストレートに伝わる。

蓮はそんな希祈が気になっていた。
純粋に、どんな人なのかもっと知りたい、興味がある、という気持ちだ。

だから、希祈が背負っていたプレッシャーのことも、周りに見せないように取り繕ってきた悩みにも、蓮は少しだけ気づいていた。


その姿を少しだけ見せた希祈を見兼ねた蓮は、やっと弱っていた部分を見せたか、とため息をつきながら、そっと手を差し出した。


「……はい。」