「痛っ……」
希祈は思わず声をあげると、すぐに脚をさすった。
まさかとは思ったが、そのまさかだった。
思いっきり衝撃を受けた希祈の脚が悲鳴をあげていたのだ。
ビリビリと痺れるようなこの痛みに、希祈は覚えがあった。
中学生のとき、部活でねんざしたときの痛み。
陸上部員にとっては、致命的なことだった。
もちろんその年の夏の大会は棄権となり、希祈にとっては涙の思い出だった。
…最悪……。
立てないし痛いし…。
経験上、希祈は、しばらく安静したまま生活を送るしかないことを知っていた。
体育祭…あるのに……。
もう…なんでいつもこうなんだろう…。
体育祭はもうすぐそこまで迫っていたはずだ。
希祈は、その体育祭のメインであるクラス対抗リレーのアンカーを務めることになっていた。
回復が早ければなんとか当日までには走れるようにはなるものの、それまでの練習に全く参加できないということは、どうしても避けたかった。
メイン種目であるだけに、見事に体育会系が集まった希祈のクラスでは、クラス総合順位1位を獲るためにリレー1位は絶対条件だった。
毎日練習して確実に1位を獲る、と昨日のホームルームで決めたばかりだった。
そんな矢先に、まさかアンカーがこんな失態を起こしてしまうなんて。
希祈は急に自分がすごく嫌になった。
自分はいつも失敗ばかりで空回りだ、と。

