一人、二人、 彼はボールを蹴ったまま抜いていく。 ついにゴールを決め、 同じチームのサッカー部員と ハイタッチしている彼の笑顔を あたしは一人見つめていた。 自然と頬が熱を帯びるのを感じた。 何となく恥ずかしくなって 一人で俯いて、 出しっぱなしだった蛇口の水を 静かに止める。 すると少し離れた場所から 声がした。 「育ちゃん!」 突然名前を呼ばれ 声のするほうへ振り向くと、 笑顔の彼がこっちへ走ってきて。 「…広」