「花本さん!」

汚れた手を早く洗いたくて
すぐ廊下に出ると、
タイミングを見計らったように
先生が目の前に現れた。


「本、持ってきてくれた?」

「…はい、適当に置いときました」


持ってきてくれた?
って…
持ってきてなかったら
ここまで来ないだろ。


「ありがとう!助かったわ~
悪いんだけど、もう一往復…」

「用事あるんで失礼します。」



あたしは目を合わせないまま
先生の隣をすり抜けた。