桜ちる



そして
立ち上がると、背広のポケットから指輪を出し
櫻子の手を取り指に入れた。
ぴったりであった。ダイアが取り囲んだサファイであった。

「嫌なら今晩だけ、そう明日も。宿を出るまで」

櫻子は、何もかもやり直したかった。
しかし
昌子が行方不明になったから、相沢に会ったのだ。
これが運命だと思った。

「嫌じゃない。嬉しい」

思い切り泣きたかったが、涙が出なかった。
余りに思いがけないことであった。