桜ちる


一昨年の今頃

三宮のホテルで愛人と会っているのを偶然見てしまった。

スイートルームに入って行くまで附けて行った。
相手は櫻子の知らない男であった。

腹立たしさより悲しかった。
又、強請られたり誰かを傷付けて終わるのだろう。

その時は二人が出てくるまでじっと待った。
其其別のエレベーターから少しの時間差で降りてきた。

男の車の後を就けた。

生まれた時から暮した六甲に上って行く
櫻子の家まで登らないで
途中に三軒ほどの住宅と広大な社宅があった。
大手会社の休暇施設もあった。

母のタクシーは、すでに見えなくなっていた。
中でもかなりモダンな一軒屋の駐車場に車を入れた。

名前は仲立と表札が出ていた。