「私で良いの」 「嫌に謙虚だな」 相沢はそう言うと、麻奈の首に腕を廻し、 桜の木の陰に連れて行った。 木に凭れて麻奈を引き寄せ、昨日は寂しかったと、 囁く彼の吐息が、瞼や唇を刺激して感覚が研ぎ澄まされた。 「君が現実だ。元気でいてくれ」 麻奈は返事が出来る状態ではなかった。 二人の抱擁を破ったのは相沢の携帯電話であった。