桜ちる


「いつから来ている」
「この前で一時間余り」

相沢は初めて人前で麻奈を抱き寄せた。
コートの上からでも麻奈が冷え切っているのが解った。

「携帯鳴らしてくれたら良かったのに」
「ゆっくりしていたいだろうと思って」
「行き違ったらどうするのだ」
「その時は電話する」
「本当に」
「小森君から住所を聞いていたし、大体の時間も聞いていたから」
「そうか。彼には最後まで世話になった」
「もう来ないということなの」
「そうだよ」
「小森君は時々使っているとか」