彼氏の余命を知ってる彼女。



「懐かしい…」


お母さんはそう言いながら胸に当てるようにガラス玉を抱き締める。


「お母さん…」


「…そうね、本来、私は恋人と一緒に命を落とす“筈”だったの」


「筈…?」


「死神さんにガラス玉を渡して現実に戻って私とクロックに余命を印されたの恋人は、その日に一緒に逝こうと決めていたから、二人で海が見渡せる崖へ行ったわ。

…その日の夕日が綺麗でね。これが私の最期の晴れ舞台だと思うと何だか少し寂しかったの。

私と彼は手を繋いで、後一歩で落ちてしまう所まで歩いたわ。

そして一緒に下へ落ちようとした時──、

彼は私を地面のある方へ突き飛ばしたの──」